平成24年1月号
相続対策は3つの側面から進めよう!!
相税対策というと“いかに税金を安くするか”ということに目を奪われがちですが、本来は「争族対策」「納税資金対策」「税金対策」の3本柱で考えるべきものです。そして、これらの中でも最も重視すべきものは「争族(相続争い)対策」であり、争族対策が結果として「税金対策」になったり、納税資金対策の手段が「税金対策」だったりすることもあります。
いずれにしても、この3つの対策を、相互に密接、かつ、全体的にとらえることが大切です。
1.まず優先すべき争族対策!
10年ほど前に京都の有名老舗鞄メーカーの会長の相続で、家族や会社を二分する争いが起きました。10年経って一応の決着に至ったようですが、その間何度も裁判を重ね多くの費用と労力を費やし、家族関係は修復不可能です。
この例に限らず、今まで仲の良かった家族が相続を境に犬猿の中になったという話はよくあります。資産家であるか否かは関係なしにです。被相続人が、本当に残したかったのは残された家族の円満な生活ではなかったでしょうか。相続トラブルの防止は財産を持つ者の責務であり、特に先祖から子孫へ引き継がれる財産の流れを自身の代で止めてしまうのは避けなければなりません。
また、遺産分割が確定しないことは相続税額にも影響します。「小規模宅地等の相続税の特例」や「配偶者の相続税額の軽減」といった大きな優遇制度が原則として適用できずその税負担も増大します。
そのためにも生前の早いうちから財産の承継計画を立て、紛争のタネを残さないようにしなければなりません。その役割を果たしてくれるのはやはり「遺言」といえるでしょう。まずは財産の棚卸しを行い、必要な相続税額を把握すると共に承継計画を立て、その計画に沿った「遺言書」をできれば公正証書で作成します。家族や財産内容の変化などに応じて、定期的に見直しをすることも必要です。遺言の作成に合わせて、分割協議が不要な生命保険の活用や、二次相続まで自身の意思を遺せる信託の活用なども検討します。
そして、何より大切なことは自身の意思を家族に理解してもらっておくことです。
2.ムリなく相続税を支払えればOK!
将来、相続税の納税資金を預貯金や有価証券などの換金性の高い資産で賄うことができれば良いのですが、所有する財産の大部分が不動産や同族会社株式といった場合には、納税方法を計画しなければなりません。制度上は「延納」や「物納」、農地や非上場株式等の「納税猶予」が存在します。生前対策としては以下のような方法を検討します。
①収益物件を相続人に移転し不動産賃貸料を納税資金として蓄える。
②同族会社を通じて相続人に支払う給与を納税資金として蓄える。
③想定される相続税額に見合った生命保険に相続人ごとに加入する。
④納税のために売却(物納)する土地を整備する。
3.税金対策で手残りを増やす!
相続税対策を行う際にも現状の把握は重要です。所有する各財産の評価額と相続税額を計算した上で、様々な方策を検討します。場合によっては所得税や法人税など他の税金を含めて総合的に判断しなければなりません。相続直前の対策はリスクを伴いますのでやはり早めの対策が必要です。
具体的には以下のような方法を検討します。
① 生前贈与を活用する
・毎年少しずつ贈与することで税負担を減らす。
・収益物件の贈与で相続財産の増加を抑制する。
・配偶者に対する2000万円までの居住用不動産又は購入資金贈与の無税制度を利用し財産を減らす。
② 相続税計算の仕組みを利用する
・養子縁組により法定相続人を増やす。さらに孫養子なら相続税の課税を一代飛ばすことができる。
・生命保険金の非課税制度を利用する。
③ 相続税評価の仕組みを利用する
・空地を有効活用することにより土地の評価額を下げる。小規模宅地の相続税の特例対象とする。
・評価額の低い生命保険に加入する。
忘れてはいけない自分のこと、二次相続!
世界一の長寿国、日本。相続対策は早いに越したことはありませんが、実際の相続はまだまだ先かもしれません。自身の老後の生活設計を行い、最低限必要な資金を残しておくことも忘れてはいけません。
もちろん、次の相続で問題が起きないよう対策を講じておくことも重要です。