平成25年9月号
NISA(ニーサ)で失敗しないために!
来年1月1日から始まるNISA(ニーサ)。金融業界も盛んにキャンペーンを打ち出し顧客の囲い込みを始めているようです。NISAは年間100万円までの上場株式や投資信託などの投資について、その後5年間の譲渡益や分配金を非課税とする制度です。
現在10%に軽減されている上場株式等の譲渡益や配当金に対する税金が、2014年から本来の20%に戻されます。その代わりにスタートするのがNISAですが、正しく理解していないと失敗してしまうこともあります。制度の内容と注意点を確認してみたいと思います。
◆NISAはどんな制度か
2014年1月以降、株式や投資信託から生じた譲渡益や分配金に対しては20.315%の税金がかかることになります。しかし、証券会社や銀行などでNISA口座を作り、その口座で上場株式や投資信託等(以下「上場株式等」といいます。)を購入した場合、5年間はその上場株式等の譲渡益や分配金が非課税となります。なお、NISA口座で購入できる上場株式等は年間100万円までで、1人1口座しか作ることができません。
対 象 者 | 20歳以上の居住者 (口座開設年の1月1日時点の年齢) |
投資可能額 | 年間100万円 (翌年への繰越不可) |
非課税期間 | 投資年から5年間 (売却しても非課税枠再利用不可) |
非課税対象 | 譲渡益、配当金や分配金 |
対象商品 | 上場株式、上場投資信託、REIT、株式投資信託など (外国のものも可) |
制度の期間 | 2014年から2023年までの10年間 |
非課税となる投資額は1年間で100万円が限度ですので、毎年100万円の投資を行えば5年後には500万円となりますが、初年度の100万円はその年で非課税期間が終わるため、その後も100万円の投資を毎年続けても非課税となる投資額の総額は最大で500万円ということになります。
◆賢い利用方法
① 現在保有している株式等はどうする?
NISA口座では、新たに上場株式等を購入しなければならず、現在証券会社に預けている上場株式等をNISA口座に移すことはできません。NISA口座で運用したい場合にはいったん売却する必要があります。その場合、現在10.147%の税率が2014年度以降は20.315%となりますので、本年中に売却し利益を確定しておき、来年NISA口座で新たに購入した方が良いことになります。
② 中期的な売買に向いている
非課税となる投資額は年間100万円で、一度売却してしまったらその非課税枠はなくなってしまいます。したがって短期売買で少ない利益を積み上げる投資法には向いていません。1回の少ない利益に対する税金が非課税になるだけですから。そこで株式なら成長が期待できるもの、若しくは投資信託向きと言えるでしょう。ある程度腰を据えて運用した方が効果的かもしれません。
③ 100万円の枠を増やすには?
NISAは1人、1口座、年間100万円まで。異なる証券会社等で口座を開くこともできません。それなら家族名義の口座を作って・・・。これは脱税になってしまいます。それであれば110万円の贈与税の基礎控除を利用し、例えば配偶者に100万円の現金を贈与、その100万円を配偶者がNISA口座に投資する、といった方法がよいでしょう。
◆NISAのここに注意!!
① 損益通算、繰越控除ができない
税務上の最大の問題点はここでしょう。投資ですから場合によっては譲渡損が生じることもあります。通常はこの譲渡損は他の譲渡益や分配金と損益通算(相殺)することができます。また、その年に損益通算できない場合には、その損失を最大3年間繰り越すことができます。しかし、NISA口座に預け入れた株式等について非課税期間に譲渡損が生じた場合には、NISA口座内、その他の株式等を含め損益通算も繰越控除もすることができません。つまりNISA口座のために税金が増える可能性があるのです。
② 開設する金融機関をしっかり選ぶ
一度NISA口座を開設すると最低でも4年間は他の金融機関にNISA口座を切り替えることができません。銀行や証券会社により、取扱い商品も異なります。開設したはいいけどそこでは投資信託を扱っていなかった、なんてことのないよう業者選びは慎重に行う必要があります。
③ 配当の受取りはNISA口座で
配当金などの分配金を窓口や自己の銀行口座で直接受け取る場合には非課税の取り扱いはありません。あらかじめNISA口座で受取る手続きをしておく必要があります。