平成25年11月号
二世帯住宅と相続税
親子二世代、三世代といったサザエさん一家のような昭和の一般的な家庭はすっかり影を潜め、核家族が主流になって大分時が流れました。しかし今再び、嫁と姑が同じ屋根の下に暮らす同居が注目され始めたようです。その理由の一つが東日本大震災をきっかけとした親子の絆の再認識でしょう。実はそれだけでなく、親子それぞれの思惑もあるようです。子世帯にとっては、新たにマイホームを購入することなく親の土地に居住できることは経済的に大きなメリットです。また、共働き夫婦が増え、育児の面でも親の手助けがあることは有難いものです。親世帯にとっても、孫と接する楽しみや、老後の心配が解消されるなど子夫婦との同居にメリットに感じる方も多いようです。そうは言っても家にいるときに四六時中顔を合わせなければならないのは親夫婦にとっても子夫婦にとってもストレス。そこで、二世帯住宅ということになるわけです。
この二世帯住宅が相続税にどのように影響するのか、確認してみたいと思います。
◆小規模宅地等に該当すれば80%減
親にもしものことがあった場合、相続税の額に大きな影響を与えるのが「小規模宅地等の減額の特例」です。特に被相続人の居住用の宅地については、一定の要件を満たせばその宅地の評価額から8割を減額することができます。仮に1億円の宅地であっても特例が適用できれば相続税の対象となるのは2000万円です。平成27年1月1日以降の相続は330㎡(現行240㎡)までの居住用宅地等について適用することができます。では、二世帯住宅の敷地は被相続人の居住用宅地等に該当するのでしょうか?
◆要件の緩和
平成25年度税制改正で「二世帯住宅」に対する小規模宅地等の減額の特例の取り扱いが緩和されることになりました。現行制度でも、内階段など建物内部で行き来ができる建物のように構造上区分されていない二世帯住宅については、全体を一つの住居と捉え、親子が同居していたものとして敷地全体を当該特例の対象とすることができます。しかし、それぞれ玄関があり建物内部では行き来ができない建物のように構造上区分されている二世帯住宅については、被相続人の居住部分のみが特例の対象になり、子の居住部分対応する敷地は同特例の適用がありません。
改正後は、二世帯住宅であれば内部で行き来ができるか否かにかかわらず、二世帯が同居しているものとしてその敷地全体が特例の対象とされることになりました。この取り扱いは平成26年1月1日以降の相続より適用されます。
◆課税強化から一転、緩和となった二世帯住宅税制
かつては、被相続人が居住していた二世帯住宅については無条件で宅地全体が小規模宅地等の減額の特例の対象とされていました。一棟の建物に被相続人の居住部分が一部でもあればその敷地すべてを特定居住用宅地等として取り扱うことができたためです。そのため、賃貸マンションを建築しその一室にオーナーが居住することにより、敷地全体に同特例(8割減額)を適用させることを狙った賃貸併用住宅が節税対策として多く利用されてきました。平成22年4月よりこの取り扱いが廃止され、前述のとおり二世帯住宅についてもその利用区分ごとに判定しなければならなくなったのです。しかし、外見上は同じ二世帯住宅でも、構造上区分されているかいないかで課税関係が異なることは不合理であるとの指摘から今回の改正になりました。
◆区分所有二世帯住宅は適用除外!
注意しなければならないのは、区分所有建物に該当する場合には、従前と同様の取り扱いになってしまうということです。同一建物に居住していれば構造上区分されていても同居とみなされるということであれば、マンションの1階に親が居住、10階に子が居住しているような場合でも認められることなります。このような場合はもちろんですが、二世帯住宅の場合でも区分所有建物であれば、専有部分は別々に取引される権利であり、一体を被相続人の居住用と見ることは好ましくないとして除外されています。