平成26年10月号
子供への住宅資金援助で相続税が増加!?
念願のマイホーム購入。通常なら住宅ローンを利用しての購入となりますが、親に余裕があればある程度の資金援助を期待したいところです。国の方でも高齢者が抱える金融資産を若い世代へ移転させ、経済を活性化しようと様々な制度を設けています。しかし、そういった制度が実は落とし穴だったりすることもあるのです。
◆「親名義」か「贈与の特例」か「金銭の貸借」か
何の考えもなく親から援助を受けてしまったら、多額の贈与税が課せられてしまうかもしれません。誤った不動産登記や手続きのミスも同様です。親から資金援助を受ける場合には、次の3つの方法を検討します。
(1)親からマイホーム資金の贈与を受ける
贈与税の基礎控除額110万円を超える贈与を受けてしまうと、その超えた部分について贈与税が課されます。1,000万円贈与を受ければ贈与税は177万円(平成27年度以降の贈与の場合)です。そこで、まとまったの資金贈与の場合には、贈与税の特例を利用します。「相続時精算課税制度」を利用すれば親からの贈与については2,500万円まで無税となります(2,500万円を超える部分については20%の贈与税)。ただし、贈与を受けた額が親の相続の際に相続税の対象とされますので注意が必要です。
また、平成26年中であれば親や祖父からの贈与については500万円まで非課税となります。基礎控除と合わせれば610万円、相続時精算課税と合わせれば3,000万円まで無税となります。非課税制度は平成26年末までの制度ですが、平成27年以降も制度の延長、拡充に向けて政府与党で議論がされているようです。
(2)親からマイホーム資金を借りる
親が出資した住宅資金を、贈与ではなく借入とするのであれば贈与税の問題は生じません。ただし、「返してもらわなくても良い」とか「ある時払いの催促なし」ということですと贈与とみなされてしまう可能性がありますので、次のような点に注意して下さい。
① 金銭消費貸借契約書(借用書)を作成する。
② 一定の利息を付ける。
③ 契約に従い毎月確実に返済する。
④ 返済可能期間(親の年齢が80歳くらいまで)とする。
⑤ 返済可能な償還金とする。
(3)親の名義でマイホームを購入する
出資した親が不動産の名義人となります。親が資金の一部のみ出資した場合には親子共有となります。親名義の不動産に子供が居住することになりますが、賃料のやり取りのない使用貸借にすれば税務上も問題はありません。
◆不動産化で親の財産圧縮!
(1)から(3)のどの方法を利用すれば良いのかは個人個人の状況によりますので一概にはいえません。ただ、親に資金をに返す必要があるのであれば、(2)にするしかないでしょう。銀行返済と同じようにやり取りします。
また、親に財産がそれほどなく相続税の心配がない場合は、(1)の特例を利用した贈与を中心に考えます。この場合には親自身の老後資金も忘れてはいけません。
問題となるのは、親にある程度の財産がある場合です。「現金」は相続税が一番高い財産と言われています。そこで、この機会に親の現金を子供の住まいに変えてしまう訳です。すると土地は一般的に時価の8割といわれる路線価額、建物はさらに低い固定資産税評価額で評価されます。更にマンション特にタワーマンションなら購入金額の3割、4割評価になることも少なくありません。戸建てに比較して取引金額が同じでも土地持分が小さいためです。現金で遺して多額の相続税を払うくらいなら、子供の住まいとして不動産を遺し、相続税を減らそうということです。
◆親の居宅も負担少なく相続できる!
親が息子の住まいを購入することのもう一つの大きなメリットは、相続の際、親が住む土地に「小規模宅地等の減額特例(80%減額)」を適用できる可能性が高くなるということです。例えば両親が住む実家は、父が亡くなった時は母が相続すればよいのですが、次に1人暮らしの母が亡くなった時にその実家を相続する子供に持家があると、この特例を適用することができないのです。「既に自分の住まいがあるのなら減額する必要はない。」ということなのです。しかしおかしな話しですが、住まい(建物)が親の名義なら、自分の住まいではないので80%減額できてしまうのです。
◆忘れてはいけない争族防止
以上のように将来の相続税の観点からは、子供の住まいであっても親名義で取得することが有利であると考えられます。しかし、子供が複数の場合には争族のことも考えておかなければなりません。長男が住んでいても親名義ですから相続財産となり、相続人全員による分割協議が調わないとその住まいは長男のものにはなりません。そこで、遺言を作成し、長男の取得を確定しておくことが重要です。