平成26年11月号
医療費控除で税金を取り戻す!
意外と馬鹿にならないのが所得税の医療費控除。「大した金額にはならないし、手続きも面倒」と折角の権利を放棄してしまっている人も多いようですが 、病院や薬局での支払額が3割4割引きになると考えれば見方も変わってくるのではないでしょうか。 ちょっとの手間で数万円、数十万の還付を受けられる場合もあります。最近では確定申告書も国税庁ホームページで簡単に作成できるようになっていますので「今年は医療費が多かった。」という方、是非トライしてみてください。今回はより効果的に医療費控除を受けるにはどうすれば良いのか、確認してみたいと思います。
◆医療費控除とは
自身や同一生計の親族が1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費のうち、10万円を越える金額をその者の所得金額から控除できるという制度が医療費控除です。適用を受けるためには、医療費の明細書を記載した確定申告書を、医療費の領収書を添付又は提示して提出しなければなりません。
◆家族全員分の医療費をまとめて申告
年間の医療費総額が10万円を超えなければ、原則として医療費控除はできません。健康な人にはこの10万円のハードルは高いかもしれません。しかし、医療費控除は自身の医療費だけでなく、同一生計の親族の医療費もまとめて申告することができます。かき集めれば何とかなるかもしれません。なお、同一生計というのは同じ財布で生活しているということですが、同じ家屋に住んでいれば通常は同一生計とみなされます。一緒に住んでいれば親の医療費も控除できるということです。逆に別居の場合でも仕送りなどで生活しているのであれば同一生計になります。
◆家族のうち最も所得の高い人が控除を受ける
医療費控除は所得控除です。所得が減るためそれに対する所得税も減ることになります。税率は所得税住民税合わせて15%から50%(平成27年以降は55%)で、現在は所得税の2.1%に相当する復興特別所得税が上乗せされます。所得の高い人ほど税負担が重くなる仕組みです。 したがって、家族の中で所得が一番高い人から控除した方が、税効果が高いことになります。ただし、200万円が控除限度ですので、医療費総額が210万円を超える場合は、その超える部分は2番目に所得の高い人から控除してください。
◆出産は医療費控除のチャンス
医療費控除は、必ずしも保険診療だけが対象になるという訳ではありません。たとえば、通常保険の利かない出産関連の費用については、分娩の費用や入院費用はもちろん、以下のような費用も控除の対象となります。
・妊娠中の定期検診費用
・不妊治療の費用
・通院のための交通費
ただし、健康保険加入者が支給を受ける「出産育児一時金」は、これらの金額から差し引かなければなりません。自治体から妊婦健診の補助を受けた場合も同様です。
◆こんな支出も控除の対象です
病院やクリニックに支払った費用以外にも様々な費用に医療費控除が認められます。例えば市販薬です。ドラックストアで購入したものも治療のための医薬品であれば控除の対象です。歯の治療も対象ですが、自由診療であっても大丈夫です。インプラントや入れ歯、金歯、セラミックなど結構な費用が掛かります。治療のために必要であれば矯正も対象となります。あん摩マッサージ指圧師、針師、灸師、柔道整復師など資格者に対する施術費用もそれが治療のためであれば対象とされます。介護保険の対象となる居宅サービスや特別養護老人ホーム・介護老人保健施設に支払った費用についても医療費控除の対象となるものがあります。通常は領収書に医療費控除対象額が記載されていますので確認してみてください。病院等に行き来するための電車やバスなどの交通費も医療費控除の対象です。領収書がなければ掛った費用をメモ書きしてください。通院のために必要であればタクシー代も対象となります。
◆対象にならないもの
医療費控除の対象にならない支出のうち、間違えやすい代表例としては以下のようなものがあります。
・インフルエンザ等の予防注射
・健康診断
・健康ドリンク
・健康増進剤
・個室差額ベッド代
・美容のための歯の矯正
・コンタクトレンズ(レーシンクはOK)
・治療と関係ないマッサージ、整体
・自家用車による交通費