平成25年12月号
平成26年度税制改正大綱 決定!!
与党自民党及び公明党は、12月12日、平成26年度税制改正大綱を発表しました。デフレ脱却及び日本経済再生を達成するために、既に10月に前倒しで決定された「民間投資活性化等のための税制改正大綱」を含め、企業の投資活動を加速化を目的とした「設備投資促進税制の創設」「復興特別法人税の1年前倒し廃止」「交際費課税の緩和」など、特に法人にとっては減税色が強いものとなりました。一方、ここ数年の高所得者や資産家への税負担の増加の流れは、本大綱でも継続しており、「高所得者の給与所得控除の縮減」「相続税額の取得費加算特例の縮減」「居住用財産の買換え特例の縮減」など厳しいものとなっています。
なお、相続税、贈与税については平成25年度の税制改正において、平成27年以降を中心とした大きな改正が既に決まっているためか、平成26年度改正では目立った項目は盛り込まれませんでした。
~所得税~
◆給与所得控除の上限の引下げ(縮減)
給与所得は、年間の給与の額面金額から給与所得控除額を控除することで計算されます。この給与所得控除額の上限が引き下げられます。(給与所得=給与収入金額-給与所得控除額)
現 行 制 度
総収入金額 |
給与所得控除額 |
162.5万円以下 |
65万円 |
180万円以下 |
収入金額×40% |
360万円以下 |
給与収入×30%+18万円 |
660万円以下 |
給与収入×20%+54万円 |
1,000万円以下 |
給与収入×10%+120万円 |
1,500万円以下 |
給与収入× 5%+170万円 |
1,500万円超 |
245万円 |
平成28年分
総収入金額 |
給与所得控除額 |
1,200万円以下 |
現行制度と同じ |
1,200万円超 |
230万円 |
平成29年分以後
総収入金額 |
給与所得控除額 |
1,000万円以下 |
現行制度と同じ |
1,000万円超 |
220万円 |
◆住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)(拡充)
住宅ローン控除とは、居住者が住宅の新築もしくは取得または増改築等をして、居住の用に供した場合において一定の要件を満たすときは、その居住年から10年間、原則として年末の住宅ローン残高に対して1%の金額を所得税額から控除できる制度です。
平成26年4月1日以後の既存住宅の取得
耐震基準に適合しない既存住宅を取得した場合において、その取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ、その者の居住の用に供する日までに耐震改修工事を完了していること等の一定の要件を満たすときは、その既存住宅を耐震基準に適合する既存住宅とみなして、住宅ローン控除の適用ができることとされます。
◆特定の居住用財産の買換え特例(縮減・延長)
特定のマイホーム(居住用財産)を売却し、代わりのマイホームに買い換えた場合には、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
同特例の要件が下記の変更された上、2年間延長されることとなりました。
現 行 制 度
○居住用財産(マイホーム)の要件
・・・譲渡対価の額が1億5,000万円以下であること
平成26年1月1日~平成27年12月31日
○居住用財産(マイホーム)の要件
・・・譲渡対価の額が1億円以下であること
◆居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(延長)
マイホーム(旧居宅)を売却し、新たにマイホーム(新居宅)に買い換えた場合において、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件のもと、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失がある場合には、譲渡年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
同特例が2年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成27年12月31日 |
◆特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(延長)
住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの債務残高を下回る価額で売却した場合において、損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件のもと、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失がある場合には、譲渡年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
同特例が2年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成27年12月31日 |
◆優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(延長)
国や地方公共団体、一定の事業を行う業者に優良住宅地等の造成等のために土地等を売却した場合には、その長期譲渡所得に係る所得税については次のように計算します。
① 課税長期譲渡所得金額が2,000万円以下である場合
課税長期譲渡所得金額×10%(住民税4%)
② 課税長期譲渡所得金額が2,000万円を超える場合
200万円+(課税長期譲渡所得金額-2,000万円)×15%(住民税5%)
同特例の対象となる範囲に一定の措置を講じた上、3年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成28年12月31日 |
◆特定の事業用資産の買換え特例(延長)
事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合には、一定の要件のもと、80%を限度に譲渡益の一部を将来に繰り延べることができます。
同特例の対象となる範囲に一定の措置を講じた上、3年間延長されることとなりました。
なお、長期土地建物等から国内にある土地建物等への買換えの適用期限については平成26年12月31日までとなっています。
適用期限 |
~平成29年12月31日 |
(法人の場合には平成29年3月31日まで)
◆相続財産である土地等を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例(縮減)
相続により取得した財産を「相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日」までの間に売却した場合には、所得税の譲渡所得の金額の計算上、課せられた相続税額のうち売却した相続財産に対応する金額を取得費に加算することができます。
売却した相続財産が土地等である場合には、すべての土地等に対応する相続税相当額を取得費に加算することができましたが、改正後は譲渡した土地等に対応する相続税相当額に限られることになりました。
現 行 制 度
(注)加算額はこの規定の適用前の譲渡益を限度とする。
現平成27年1月1日以後の相続
(注)加算額はこの規定の適用前の譲渡益を限度とする。
◆ゴルフ会員権等の譲渡損失の他の所得との損益通算(廃止)
現 行 制 度
ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失の金額
→不動産所得、事業所得、給与所得など他の所得との相殺(損益通算)ができる。
平成26年4月1日以後
ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失の金額
→生活に通常必要でない資産として、他の所得との相殺(損益通算)がでない。
~法人税~
◆復興特別法人税の1年前倒し廃止(短縮)
現 行 制 度
平成24年4月1日~平成27年3月31日までの期間に開始する事業年度について課税される。
復興特別法人税額=法人税額×10%
改 正 案
平成24年4月1日~平成26年3月31日までの期間に開始する事業年度について課税される。
復興特別法人税額=法人税額×10%
◆交際費等の損金不算入制度(拡充・延長)
現 行 制 度
○資本金等の額が1億円超の法人
・・・支出した交際費の全額が損金の額に算入できない。
○資本金等の額が1億円以下の法人
・・・支出した交際費等のうち800万円までの金額を損金の額に算入できる。
平成26年4月1日~平成28年3月31日(開始事業年度)
○資本金等の額が1億円超の法人
・・・支出した交際費の50%を損金の額に算入できる。
○資本金等の額が1億円以下の法人
・・・支出した交際費等のうち800万円までの金額又は50%を損金の額に算入できる。
◆既存建築物の耐震改修投資促進税制(新設)
改 正 案
青色申告書法人で、その有する耐震改修対象建築物につき平成 27年3月31日までに建築物の耐震改修の促進に関する法律の規定による耐震診断結果の報告を行ったものが、平成26年4月1日からその報告を行った日以後5年を経過する日までの間に、その耐震改修対象建築物の部分について行う耐震改修により取得し、又は建設したその耐震改修対象建築物の部分について、その取得価額の 25%の特別償却ができることとされます(所得税についても同様)。
◆雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(拡充・延長)
青色申告法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、一定の要件を満たすときは、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができます。ただし、当期の法人税額の10%(中小企業者等については20%)が限度とされます(所得税も同様)
同制度が2年間延長され、要件が緩和されました。
現 行 制 度
雇用者給与等支給増加割合が5%以上であること
~平成30年3月31日(開始事業年度)
○平成27年4月1日前開始事業年度
・・・雇用者給与等支給増加割合が2%以上であること
○平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度
・・・雇用者給与等支給増加割合が3%以上であること
○平成28年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度
・・・雇用者給与等支給増加割合が5%以上であること
◆中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(延長)
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
同特例が2年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成28年3月31日までの取得 |
~消費税~
◆消費税の簡易課税制度のみなし仕入率(縮減)
消費税(地方消費税を含む)の納付税額は、【課税売上高×5%-課税仕入高×5%】で計算します。ただし、その課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、事業区分に応じたみなし仕入率による仕入控除税額により計算することができます。
このみなし仕入率の事業区分の見直しされることになりました。
現 行 制 度
第一種事業(卸売業)・・・・・・・90%
第二種事業(小売業)・・・・・・・80%
第三種事業(製造業等)・・・・・70%
第四種事業(その他の事業)・・60%
第五種事業(サービス業等)・・50%
平成27年4月1日以後開始課税期間
第一種事業(卸売業)・・・・・・・90%
第二種事業(小売業)・・・・・・・80%
第三種事業(製造業等)・・・・・70%
第四種事業(その他の事業)・・60%
第五種事業(サービス業等)・・50%※
第六種事業(不動産業)・・・・・40%
※金融業及び保険業を第四種事業から第五種事業へ変更
~贈与税~
◆直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(拡充)
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、平成26年中は住宅取得等資金のうち500万円(省エネ等住宅については1,000万円)まで贈与税が非課税となります。
改 正 案
適用対象となる既存住宅用家屋の範囲に、地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合しない既存住宅を取得した場合において、当該既存住宅の取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ、その者の居住の用に供する日までに耐震改修工事を完了していること等の一定の要件を満たす既存住宅用家屋を加えられます。
◆住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(拡充)
親から住宅取得等資金の贈与を受けた20歳以上の子が、一定の要件を満たすときは、贈与者である親の年齢が65歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。
改 正 案
適用対象となる既存住宅用家屋の範囲に、地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合しない既存住宅を取得した場合において、当該既存住宅の取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ、その者の居住の用に供する日までに耐震改修工事を完了していること等の一定の要件を満たす既存住宅用家屋を加えられます。
~その他~
◆認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の所有権保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減(延長)
認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の所有権保存登記、所有権保存登記に対する登録免許税
・所有権保存登記 ・・・・・・・・1/1000(本則4/1000)
・所有権移転登記(売買)・・・1/1000※(本則20/1000) ※戸建の認定長期優良住宅については2/1000
同特例が2年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成28年3月31日 |
◆新耐震基準に適合するために改修した場合の不動産取得税の課税標準の特例(新設)
一定の要件を満たした中古住宅については、建物の価格から新築年月日に応じた金額を控除した金額が不動産取得税の課税標準とされます。
改 正 案
新耐震基準に適合しない中古住宅を取得し、入居前に新耐震基準に適合するための改修を実施する場合について、既存住宅の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例が適用されます。
◆新築住宅特例適用住宅用土地に係る不動産取得税の減額の住宅新築までの年数の緩和措置(延長)
新築住宅の敷地である土地については、その取得の日から3年以内に建物を新築した場合には、不動産取得税の減額措置が適用されます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成28年3月31日 |
◆認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例(延長)
認定長期優良住宅を新築した場合には、その固定資産税評価額から1,300万円(一般の場合は1,200万円)を控除した金額に対して不動産取得税が課税されます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成28年3月31日 |
◆新築住宅に係る固定資産税の税額の減額(延長)
新築建物は、120㎡までの部分については、次の年度分の固定資産税が2分の1減額されます。
・3階建て以上の耐火・準耐火建築物・・・5年度分(認定長期優良住宅については7年度分)
・上記以外の住宅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・3年度分(認定長期優良住宅については5年度分)
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成28年3月31日 |
◆耐震改修を行った既存家屋に係る固定資産税の減額措置(新設)
平成26年4月1日~平成29年3月31日までの改修工事
建築物の耐震改修促進法の改正に伴い耐震診断を義務付けられ、その結果が所管行政庁に報告された家屋(住宅を除く。)について、政府の補助を受けて、平成26年4月1日から平成29年3月31日までの間に建築基準法に基づく現行の耐震基準に適合させるよう改修工事を行った場合において、その旨を市町村に申告したものに限り、改修工事が完了した年の翌年度から2年度分の当該家屋に係る固定資産税について、当該家屋に係る固定資産税額の2分の1に相当する金額(当該2分の1に相当する金額が当該補助対象改修工事に係る工事費の2.5%に相当する金額を超える場合は、当該2.5%に相当する金額)を減額されます。