平成26年4月号
相続税額の取得費加算特例の改正と有効活用
平成26年度税制改正の中でも、相続税に関する大きな項目の一つが「相続税額の取得費加算特例」の縮減です。実際には所得税法の改正ですが、相続に絡む税負担が増加することは、平成27年1月から予定されている相続増税と相まって、土地所有者には厳しい改正となりました。そうはいっても、この特例は相続後にしか使えない大きな特例であることには違いありません。制度の内容と改正点、有効な活用方法について確認したいと思います。
◆相続税額の取得費加算とは?
土地や建物などを売却した場合には、その譲渡益に対して所得税等が課されます。例えば相続により取得したA土地(購入金額不明)を4,000万円で売却し、売却の際に200万円の費用を支払ったとします。その場合の譲渡税は通常次のように計算されます。
しかし、相続した資産を相続税の申告期限から3年以内(つまり相続から3年10か月以内)に売却した場合には、その売却した人の相続税のうち一定金額を上記の取得費に加算することができます。簡単にいえば支払った相続税を経費扱いできるため、譲渡所得税が減少するということです。これが「相続税額の取得費加算特例」で、税制改正により取り扱いが以下のように変わりました。
①改正前(平成26年12月31日以前の相続)
改正前は、売却した土地だけでなく、売却していない土地も含め、相続したすべての土地等に係る相続税額が特例の対象とされていました。
②改正後(平成27年1月1日以後の相続)
改正後は、実際に売却した土地等に係る相続税額のみが特例の対象とされることになります。
◆有効な利用法は?
① 売却する土地は相続税がかかる人が相続を!
この特例は、相続財産を売却した本人の相続税のみが対象となります。したがって「配偶者の税額軽減」の適用を受けて相続税額がゼロとなった人が売却したら、取得費加算額もゼロとなってしまいます。逆に相続税額の二割加算の適用を受けた孫等は、加算額も大きくなることになります。相続税、所得税トータルで考えなければなりません。
② 売却のメドが立たない場合には同族会社などへ
特例の適用を受けるためには相続から3年10か月以内に売却しなければなりません。どうしても無理そうであれば、とりあえず同族会社や親族などに売却して適用を受けます。同族会社や親族はその後いつ転売しても構いません。
③ 同族会社への売却で二次相続対策
不動産を手放したくない場合も、同族会社や親族へ売却すれば、特例の適用を受けた上で間接的に不動産を所有し続けられます。さらに同族の資産管理会社などに売却すれば、不動産が証券化され、次の相続の際は不動産ではなく一般的に評価が低くなる株式の相続となりますし、登記費用も不要です。生前対策も株式での移転が可能なため非常にし易くなります。収益物件なら所得税対策にもなります。