平成26年12月号
なぜ相続税対策にタワーマンションなのか?
効果も即効性も高い相続税対策として注目を集めているタワーマンション。相続増税により、節税への関心が高まる中、節税対策の定番になったともいえます。タワーマンションの取得が、相続税の節税にどのように作用するのか、どのようなリスクが潜んでいるのか、確認してみましょう。
◆実勢価格と相続税評価額に大きな差
「現金は最も相続税が高い財産」と言われます。現金や預金は、通常額面金額がそのまま相続税評価額です。そこで現金を不動産などに変える相続税対策が古くから採られてきました。
土地の相続税評価額は通常「路線価×地積」で求められます。路線価は公示価格の80%を目安に設定されています。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額です。固定資産税評価額は建物の用途や構造、仕様に応じた再建築評点数を基に市町村が評価します。一般的には建築工事費の60%前後といわれています。
いずれにしても、土地も建物も相続税評価額は時価よりも低い価額になるわけです。
タワーマンションも同様の評価方法です。ただし、マンションなどの区分所有建物は、各所有者は全体の一部のみ所有しているため、全体の相続税評価額を専有面積の割合であん分することになります。この機械的なあん分とタワーマンションの特異性が、大きな節税効果を生み出します。
土地については、所有者が多ければ多いほど各所有者の持分は少なくなります。同じ評価額の土地に建つ3階建15室のマンションと30階建150室のマンションでは、1室分の評価額は10倍異なるのです。
建物についても構造、仕様、床面積が同じであれば、都心でも郊外でも評価額も同じはずです。また、同じマンションでも床面積が同じなら2階でも30階でも評価額は同じです。
では、実際の売買価格はどうでしょう。タワーマンションは土地持分が少ない分、割安でしょうか?同じ間取りならどこにあっても建物価格は同じでしょうか?
通常、都心の高層階南側の部屋が人気も価格も高いでしょう。タワーマンションは評価額が低いのに価格が高いから節税効果があるのです。
東京都心のもので高層階なら、相続税評価額が購入金額の3割程度になる部屋もざらです。1億円で購入したタワーマンションの相続税評価額が3,000万円程度になってしまうわけです。
なお、購入して相続に備えるだけでも良いのですが、マンションの維持費用も結構掛かります。そこで賃貸が検討されますが、その場合には土地が貸家建付地、建物が貸家の評価となり、評価額はさらに7~8割に圧縮されます。
さらに、小規模宅地等の特例の枠が余っていれば50%減額できますので、そうなると1億円の現金がタワーマンション1,000万円程度まで圧縮されることもあり得るのです。
◆流通性が高い
この手法の良いところは、不動産でありながら換金性が高いことです。元来の富裕層ニーズだけでなく、円安により海外資産家の購入意欲も旺盛で、相続対策としてのニーズも膨らんでいるなど流通性が高く、相続後に再び現金に戻すこともさほど難しくはありません。
なお、現金を有していない場合でも、金融機関などからの借入れによる購入で同様の節税効果を得ることができます。その場合は、賃貸収入で借入金の返済ができるよう、十分な資金計画を立てることが重要です。
◆配偶者への贈与を使えば計画的に実行できる
他の相続税対策と同様、相続の時期を予測できないことが難しい点です。長期間の保有は価格低下リスクが大きくなりますし、まだ先と思っていた相続が突然やってくる場合もあります。
そこで、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)を利用するのも一つの方法です。
婚姻期間20年以上の配偶者に対するマイホームの贈与は2,000万円までが無税となります。
1億円で購入したタワーマンションの相続税評価額が2,000万円であれば、無税で配偶者へ贈与することができます。
その後、配偶者が1億円で売却することになっても譲渡税はほぼ生じません。
ただし、この一連の取引が計画的に行われたとしたらマズいのですが。
◆リスクがゼロではない
・価格下落リスク
不動産には価格変動が付きものです。相続税の節税効果以上にマンション価格が下落したら元も子もありません。
タワーマンションは流通性が高いといっても、資産価値をしっかり見極めた上で購入する必要があります。
・税務否認リスク
国税不服審判所の採決で、相続2か月前にタワーマンションを購入し、相続10か月後に相続人が売却したケースが否認されているなど、相続の直前直後の売買は認められない可能性があります。
特に売却するのであれば、相続税の税務調査後に行った方が良いでしょう。なお、調査は申告期限から2年くらいの間に行われることが多いです。